健康コラム
キリンは高血圧?
Q.キリンは高血圧?
A.そうです。高血圧です。でも、肩こりも心配です。
キリンは、大人になると全長4~5メートル。首の長さだけでも2メートル前後あります。
首の長さは、外敵の監視、食料の発見、高所の食料接種に有効で、視力がとてもいいことと相まって、とても役に立っているそうです。
首が長いということに適応する必要があるのも事実で、体のさまざまな部分が変化しています。
その大きな適応変化の一つが血圧、高血圧です。
キリンも哺乳類ですから、心臓が胴体部にあるとすると、すごく高い位置にある頭に血液を送ってあげる必要があります。高さ3メートル前後の位置に心臓があるとすると、2メートル前後は押し上げる必要があります。したがって、人の最高血圧は120〜130mmHg(あくまでも健康な方の目安です)であるのに対し、250〜300mmHgもあるようです。
うーん、これが人だとすると考えただけでも恐ろしいです。
さらに、この大きな頭が、水を飲んだり、草を食べたりする際に地表近くまで下がってきます。つまり、飲み食いするごと、いや一口飲んで起き上がり、また一口食べて起き上がり問うことを繰り返すと、頭の位置が4〜5メートル一気に上がったり下がったりするのです。人間だったらフラフラです。
心臓から頭にかけては頸動脈(けいどうみゃく)が枝分かれして一気に血圧がかからないようになっていたり、静脈にも弁が付いていて血液が一気に下りてこないようになっているほか、脳底部に網目状の毛細血管の集合体、ワンダーネットが存在していて血圧の急激な変化を緩和する仕組みが備わっています。
心臓から下の体には、さらに高い血圧がかかっているはずで、人間だったらむくみがすごそうですが、皮膚は固く、血管も固い構造になっています。
キリンの循環器には、高血圧や首の上げ下げに伴う大きな血圧変動に対する適応変化があり、最高血圧250〜300mmHgという高血圧でも快適に過ごして行けるようですが、長時間頭を下げることはやはりできないようです。つまり、横になって眠れないようです。横になってしまうと、長時間頭が高血圧にさらされてしまうためで、立ったまま寝るか、すわっても背中の上に頭をのせて休むそうで、草食動物の宿命からか人間と違って睡眠については短時間で、快適(?)ではないようです。
キリンは高血圧に順応した体をお持ちなので、深刻な病気は考えられませんが、これが人間だったら、自覚症状がないまま長い年月をかけて動脈硬化が進み、心臓であれば狭心症、心筋梗塞、頭部であれば脳梗塞、脳出血へと進行することが考えられます。
最後に、あの長い首も人間と同じ数の7つの頸椎で構成されていて、筋肉で支えていることになります。個人的には、高血圧だけでなく、肩こりも心配なところです。
(参考:福岡市動物園、日本心臓財団)