肝臓病(肝機能障害・肝炎など)について
肝臓には、痛みなどを感じる神経がありません。よく、『肝臓は沈黙の臓器』と言われています。肝臓はある程度病気が進行しないと自覚症状が出ないためです。自覚症状がないため、放置されてしまい、異変に気付き検査を受け、病気が見つかった時点ではかなり悪化していて、完治が難しいことが多いのです。
頭痛やおなかの不調などで、症状や痛み、苦痛によって病院に受診するケースは多いものの、自覚症状がはっきりと出ない初期の肝臓病では、気がつくのが遅くれがちになります。人間ドックや健診、たまたまほかの部位で受けた検査で肝機能の異常が発見されて要精密検査となった場合は、症状がなくても迷わずに検査を受けるべきです。
検査は、初回受診時に、血液検査のほかに腹部超音波検査を行い、肝臓だけでなく周辺部位のも同時に行い、次回受診時に結果をお知らせするケースが多いです。
脂肪性肝障害(アルコール性脂肪肝、単純性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎)
肝臓の特徴と働き
肝臓は、人の体内の中で最も大きい臓器で、体重のおよそ50分の1、大人だと1~1.5㎏前後の重さがあります。肝臓の一部を切除しても健康な肝臓なら再生し、肝臓については生体間での移植が可能なほど再生能力が高いことが知られています。
肝臓には、判明しているだけでも500以上の働きがありますが、私たちの体に欠かせない重要な働きが大きく4つあります。
- 代謝 摂取した栄養素が体内に吸収できるよう合成、貯蔵、供給する働き
- 分解・解毒 アルコール、薬、有害物質などを分解し無毒化する働き
- 胆汁の合成 腸の消化・吸収に必要な胆汁という消化液をつくる働き
- 免疫機能 異物を捕食、ウイルス感染した細胞や老化した細胞を処理する働き
①代謝 多くの食べ物はそのままでは体内に吸収できず、肝臓が変化させています
- ぶどう糖をグリコーゲンに転換し貯蔵、必要時にエネルギーとして供給
- 赤血球を作るための葉酸(ようさん)やビタミンB12を貯え、必要な時に供給
- アミノ酸から、アルブミンとフィブリノゲンを作り、供給
②分解・解毒 体内に入った毒物を分解し、毒のないものに変化させています
- アルコールを中和
- ニコチンを中和
- アンモニアを中和
- 乳酸をグリコーゲンに転換
※人が運動をすると筋肉の中でぶどう糖を燃焼し乳酸を生成します。乳酸は血液中にたまると、疲れを感じる物質として知られています。
③胆汁の合成
胆汁は、脂肪を消化する消化液で黄緑色をし、肝細胞から絶えず分泌していますが、肝細胞は、脾臓(ひぞう)から届いたビリルビンを水に溶けやすいように変化させ、胆汁の中に排出します。胆汁はアルカリ性の性質を持っていて、酸性の胃酸を中和する作用もありますので、胆汁の合成・分泌が悪いと胃酸の中和がうまくいかず、腸の中で炎症を起こすことが考えられます。
④免疫機能 免疫細胞が働く場所
- クッパー細胞という肝臓のマクロファージが体内に侵入した異物を捕食
- NK細胞がウイルスに感染した細胞や老化した細胞を処理
- T細胞が免疫細胞に指令を出します
※マクロファージとは、体外から侵入した細菌やウイルスを食べる細胞です。
肝臓病とは?
まさしく、肝臓の病気ですが、肝臓の状態により3つ状態があると考えられ、肝炎、肝硬変、肝がんと進行するのが一般的です。ただし、肝炎の前の症状として脂肪肝があり、これを考慮すると、4つの状態があるとも考えられます。
脂肪肝 ・・・・・ 肝炎 ⇒ 肝硬変 ⇒ 肝がん へと進行することがあります
肝臓の病気でよくみられるものは、肝炎の前の状態でもある脂肪肝が一番多いです。脂肪肝に続き多いのは、体質性黄疸、ウイルス性肝炎(A、B、C型)、肝がんと続きます。自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎は稀なケースではありますが、よく検査して診断することが需要です。
脂肪肝について
脂肪肝(脂肪性肝障害)
脂肪肝は、中性脂肪が肝臓に多く蓄積した状態です。過食、運動不足、飲酒が原因だと考えられます。エコー・腹部超音波で画像を見ると、肝臓が白っぽく見えます(当院では検査時に患者様にも撮影の終了時にご覧いただくことが多いです)。
もともと肝臓は、エネルギー源として脂肪を作り、肝細胞の中にためていますが、使用するエネルギーより作った脂肪が多いと、肝細胞に脂肪がどんどんたまります。一般的に、肝細胞の30%以上が脂肪化した状態が『脂肪肝』と考えられています。ている状態をといいます。BMIが25以上の人は、体内の皮下組織に余剰な脂肪を蓄積していますが、肝臓にまでついてしまったものと考えられます。肥満の方の20~30%に脂肪肝がみられます。
脂肪肝だけでは、自覚症状はまずありません。血液検査では、GOT、GPT、γGTPなどが上昇することが多いです。
肝疾患の中でも脂肪肝の占める割合は多く、健診受診者の20~30%前後が、脂肪肝か脂肪肝を併発しております。男性に多く、30~50歳代までは20%以上の方で併発しており、女性は40代後半から増加し、50歳代後半では男性とほぼ同じ15%前後の方が併発しています。
脂肪性肝障害は、大きくわけて
飲酒によるアルコール性脂肪肝と、アルコールには無関係で肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に合併する単純性脂肪肝に分けられます。単純性脂肪肝は最近では、非アルコール性脂肪性疾患(NAFLDナッフルディー)と呼ばれるようになりました。
アルコール性脂肪肝 飲酒に起因
非アルコール性脂肪性疾患(NAFLDナッフルディー) 飲酒とは無関係
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 単純性脂肪肝
お酒をほとんど飲まない人の脂肪肝を『非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)』と呼ぶようになりました。飲酒は無関係で肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病の方は、肝臓で作られるインスリンの量が低下しているか、量が十分作られていても効き目が低下してしまい内臓や非下肢に脂肪が蓄積しやすくなるために併発するものと考えられています。
この脂肪肝は、肥満や生活習慣病の治療により、病状は大きく改善するのが特徴です。わずかな減量で大きく症状が改善する可能性がある一方、わずか2~3kg程度の増量でも大きく症状が悪化するケースもあります。
90%前後の方は、そのまま脂肪肝の状態で推移しますが、10%前後の方が、肝炎が持続し徐々に線維化が進行する、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれる状態に深奥することが最近わかってきております。NASH(肝炎)が改善しなければ、肝硬変や肝がんに進行していきます。
これは、糖尿病で死亡する方の中に、肝硬変で死亡する方の割合が意外と高いことから判明したもので、従来あまり関係が高くないと考えられていた、糖尿病と肝硬変の関係性について研究が進められているところです。
さらに、脂質異常、高血圧とも相関が高いことが最近の調査で判明しつつありますが、因果関係、原因までは解明されていません。
糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD・NASH
空腹時血糖が110 mg/dL以上の受診者のおよそ約半数、
空腹時血糖が126 mg/dL以上の約70%が、
非アルコール性脂肪性肝疾患と合併
脂質異常症と非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD・NASH
脂質異常とアルコール性脂肪性肝疾患の合併頻度は、約50%程度
高血圧と非アルコール性脂肪性肝疾患
高血圧と非アルコール性脂肪性肝疾患の合併頻度は、約30-50%程度
アルコール性脂肪肝
アルコール性脂肪肝は、毎日、日本酒なら3合以上、ビールなら大ビン3本以上、ウイスキ一ではダブル3~4杯以上のお酒を飲む人の多くに脂肪肝が認められます。飲酒して体内に入ったアルコールは、ほとんどが肝臓で解毒・中和されて、体外に排出されますが、解毒過程で肝臓の働きに異常や負荷がかかり、肝臓に脂肪が蓄積します。
アルコール性脂肪肝は禁酒で大きく改善いたしますが、NASHの場合は肝硬変や肝臓がんへ進展する場合があり、正確な診断と治療、経過観察が必要です。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)<NAFLDが進行した形態>
脂肪肝の治療
生活習慣の改善で症状の改善が期待できます。軽症の脂肪肝の場合は、比較的簡単に改善します。
アルコール性脂肪肝やアルコール性脂肪性肝炎(ASH)の場合
禁酒、減酒が効果的です。
特に、ASHのケースですと、触診でも触れることができた肝臓の腫れが、禁酒で顕著に縮小します。肝臓内部に蓄積した脂肪に加え余剰な水分が血液中に排出されるためです。肝硬変などに進行する前に禁酒し、心身の疲労や睡眠不足を解消しょう。
単純性脂肪肝・非アルコール性脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の場合
肥満が原因の場合は減量します。
治療としては、生活習慣の改善です。低カロリー、バランスのよい食事、適度な有酸素運動、休養・睡眠です。
肝臓に炎症や線維化がみられるNASHの場合は、放置すると悪化の恐れがあり注意が必要です。生活習慣の改善で、原因となる肥満や糖尿病を改善するのが第一です。食事制限や運動による減量が効果的です。
ご参考までに、チェックシートを作成してみました。
<脂肪肝改善の生活チェックシート表>
- 標準体重からどのくらい? 標準体重 =(身長-100)×0.9
- BMIはどのくらい?
BMI =体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m
理想は、BMI = 22。正常値は、18.5~25。肥満は、25以上 - ウエスト周囲経はどのくらい?
肥満 : 男性 85cm以上
女性90cm以上 - 毎日お酒を飲んでいる
- 太っている (20歳時より10kg以上増加している)
- 夜食を食べる
- 早食い、大食い、まとめ食いをする
- 好き嫌いがある、偏食が激しい
- 甘いもの、脂っこいもの、こってりしたものが好き
- 食事の過剰摂取をしている 1日の摂取カロリー=標準体重×30kcal程度が理想
- 塩分の過剰摂取をしている 1日の摂取量は10g以下ですか
- 定期的に適度な有酸素運動をしていない 徒歩なら毎日30~40分(1万歩弱)
- 不規則な生活をしている
肝炎とは?
肝炎は、肝臓の肝細胞が壊れることにより起こります。肝炎の原因としては、ウイルス感染(A~E型の種類が既知)、アルコール摂取、肥満、過労など様々な原因で起こります。
肝炎の続いている期間により、急性肝炎と慢性肝炎に大別でき、急性肝炎は6ヶ月以内、慢性肝炎は、それ以上継続する状態をいいます。さらに、場合によっては劇症肝炎という状態もあります。
慢性肝炎でも軽い肝炎の場合、症状があまりありません。肝臓は『耐用能』といって、生涯に対してとても強いことから、少々の炎症では。しかし、軽い慢性肝炎でも10~20年以上継続すると、肝臓に線維が蓄積し、肝細胞が再生力を失うと肝機能が低下し、肝硬変に進行します。
肝炎の症状
慢性肝炎は、皮膚のかゆみがあるケースがみられます。軽い肝炎が長く持続するケースでは自覚症状がないことが多いです。倦怠感がある場合があります。
急性肝炎は、短期間に多くの細胞が壊れることもあり、頭痛、発熱、体のだるさ、かぜのような症状、食欲低下、吐き気、腹痛、を感じることがありますが、ほかの病気でも同様な症状の病気があるため、なかなか肝臓が悪い、とまでは気づきにくいことが多いようです。
ただし、黄疸は比較的特徴的な症状で血中のビリルビンが上昇すると出てきます。皮膚、目の『白目』部分の黄色化、尿の変色、特にこげ茶色の尿になるケースがあります。他には発疹が出るケースがあります。
肝炎は、血液検査でAST(GOT)・ALT(GPT)・γGTP等を確認します。
AST・ALTは肝細胞に多く含まれ、肝細胞が壊れる時に血液に流出、値が上昇します。
急性肝炎は、短期間に多くの細胞が壊れるため、AST・ALTが1,000以上に上昇することも多く、より重篤な劇症肝炎になると、まさしく命にかかわる場合があります。
γGTPは、肝細胞や胆汁の通り道である胆管に多く含まれ、肝炎の指標となります。
アルコール性脂肪性肝炎(ASH)
過度な飲酒によりアルコール性脂肪肝、さらにアルコール性肝炎になります。その後もアルコール摂取を続け、肝炎が長く続くとアルコール性肝硬変に進行します。飲酒の状況により変動しやすいγGTPが、治療の指標として使われます。
1日の飲酒量がアルコール換算で60gを超えると、アルコールの多量飲酒者です。
(アルコール性脂肪肝の説明の酒量と数値が異なります。ご留意ください)
アルコール摂取量の基準
お酒の1単位 ⇒ 純アルコールに換算すると20g。
1単位の目安 ⇒ ビールは中びん1本(500ml)
日本酒は1合(180ml)
ウイスキーはダブル1杯(60ml)
焼酎0.6合(110ml)
ということで、ビール1,500mlで多量飲酒者となります。
お酒が好きな方には少し厳しいかもしれませんね。
1日の飲酒量がアルコール換算で60gを超えると、アルコールの多量飲酒者です。
(アルコール性脂肪肝の説明の酒量と数値が異なります。ご留意ください)
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
アルコールに起因する肝炎ではないこと、ウイルスに起因する肝炎でないことが条件になっており、肥満、生活習慣病との併発が一般的です。これは、生活習慣の改善と減量につきます。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) の項目にも記載しましたが、人間ドックなどの検診を受けた方のおよそ20~30%の方が非アルコール性脂肪肝です。そのうち10~20%の方が非アルコール性脂肪性肝炎に進行し、さらにNASHから5~20%前後の方が肝硬変に、肝硬変に移行した方の15%の方が肝がんに移行するとみられています。疫学的な調査であること、調査が始まって時間が浅いことから、推計される値については今後の研究や知見により増減する可能性があります。いずれにしろ、肝硬変や肝がんまで進行する原因の肝炎はウイルス性やアルコール性が大半でしたが、にわかに非アルコール性の肝炎の比率が高くなっています。
薬剤性肝炎
薬剤性肝炎は、薬が原因で起こる肝機能障害で、血液検査で判明することが多く、原因薬剤の中止で治るケースが多いですが、稀に重度の肝機能障害になる方もおり、急性肝炎の症状(褐色尿、黄疸、嘔吐、吐き気、からだのだるさ、食欲低下)がでます。
A型肝炎
A型肝炎ウイルスへの感染で発症します。一過性の急性肝炎が主な症状です。感染経路は経口で、口からウイルスが侵入し感染します。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスへの感染で発症します。感染経路は血液です。性交渉が原因の場合もあります。
急性のB型肝炎は、褐色尿、黄疸、嘔吐、吐き気、からだのだるさ、食欲低下、などの症状がでます。重症になると、肝不全により死亡することが稀にあり、この場合は劇症化といいます。劇症化まで至らなかった場合は、数週間でピークを過ぎ、治ります。大人になってから初めて感染した場合は、免疫の力によりウイルスが排除され、多くの場合は持続感染となることは少ないようです。
一方、慢性のB型肝炎は、出生時や乳幼児の頃に感染し、高い確率で慢性化したケースが多いようです。
免疫機能がウイルスを排除しようと攻撃しますが、この際、ウイルスが感染している肝細胞を一緒に破壊してしまうため、肝炎となります。肝炎が持続すると肝硬変やがんに進行したりします。
B型肝炎には、インターフェロンや各種の製剤が有効です。病状に応じて使用します。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスへの感染で発症します。感染経路は、血液です。
急性のC型肝炎は、急性肝炎の症状(褐色尿、黄疸、嘔吐、吐き気、からだのだるさ、食欲低下)がでます。劇症肝炎に至る例は稀ですが、70%程度の方が慢性化します。
慢性のC型肝炎となると、肝炎の持続により肝硬変や肝がんになりやすくなります。
C型肝炎については、かつてはインターフェロンが主要な治療法でしたが、ここ4~5年で画期的な治療法が登場しております。副作用の少ない経口薬が登場し、ほとんどの患者さんでウイルスを排除できるようになりましたが、患者様の感染したウイルスのタイプによって使用する薬や療法が異なり、この選択が重要となっています。
1回目の治療でかなりの確率で排除できることが多いのですが、回数に限りがあり、失敗したからと言って、何度も繰り返し行えるわけではありません(耐性ができる可能も否定できません)。薬の選択を誤った場合には完全排除できないばかりか、貴重な治療機会を損失してしまいます。慎重に方針を見極めて治療することが必要です。消化器の専門医による治療をお勧めします。
肝硬変とは?
肝炎が長期間継続し、細胞の破壊と再生が繰り返されると、肝臓に線維が蓄積し、『肝臓の線維化』と呼ばれる状態になり、線維化が進行した状態が肝硬変となります。
肝細胞が線維組織に置き換わり、肝細胞の数が少なくなるので、肝機能が低下します。アルブミンが低下したり、血小板数の減少が見られたりします。
肝硬変では、様々な症状が見られ、特に肝臓の働きを十分に保てなくなった非代償性肝硬変でははなはだしいです。食道静脈瘤を初めとするいろいろな合併症を伴いやすくなります。
肝硬変の症状
肝硬変は、
代償性肝硬変 肝機能の低下が軽度で肝臓の機能がまだある程度ある状態
非代償性肝硬変 十分に機能しない状態
の2つの状態があります。
肝機能が悪化し、アルブミン(タンパク質の一種)を合成できなくなると、血中アルブミン濃度が低下し浸透圧も低下、血管の内側から外側に水分が漏れるようになるのです。足がむくんだり、腹水がたまるようになるのはこのためです。
肝臓には、アンモニアなどの体内の不要物の分解機能があるのですが、肝機能が悪化するとアンモニアなどの不要物の濃度が上昇します。そうすると、意識の状態が悪くなり、肝性脳症と呼ばれる状態になり、言動がおかしくなります。
肝不全の状態になると、やはり黄疸が出ることもあります。
肝硬変になると、食道や胃に静脈瘤が発生することがあり、大きな静脈瘤は破れて出血しやすいため突然、大量出血し吐血するケースがあります。
肝がんとは?
肝がんは、文字通り肝臓のがんです。健康な肝臓に発生することはあまりなくて、多くは慢性肝炎や肝硬変からがんになります。線維化の進んだ肝臓に発生することが多いためです。さらに、肝がんが発生しても、症状が出ないことも多く、かつては末期がんになり病院に行き、はじめてわかるケースが非常に多かったものです。
今では慢性肝炎の方や、肝硬変の方にがんに進行するリスクが高いことがわかっていますので、超音波検査(エコー)など等の画像検査で早期に発見されることが逓増しております。
肝がんの症状
肝がんは、初期症状は特段ないケースがほとんどで、がんが進行し肝組織が侵食されると、肝機能が悪化し肝硬変と同じ症状が出るようになります。肝がんがさらに進行すると、お腹が張ったり腹痛がでますし、おなかのなかで出血し、突発的に激痛に襲われたり、がんが骨に転移し痛みが出るケースがあります。
肝がん
肝臓に発生するがんを肝がんと呼びますが、その95%は肝細胞がんで、4%が肝内胆管がん、残りは混合型肝がん・胆管嚢胞腺がん・肝芽腫等の、まれながん種です。
したがって、一般に肝がんという場合は、肝細胞のことを指します。肝細胞がんは慢性肝炎や肝硬変から進行したものがほとんどです。病状に応じ、外科的切除、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓術、抗がん剤(分子標的薬)、放射線照射、など様々な治療法を選択します。
その他の肝臓の病気
体質性黄疸
血液検査でビリルビンという項目がありますが、この値が正常範囲を超えていると判定され精密検査となるケースがあります。ビリルビンは1−5mg/dl前後で上昇することが多く、おおむね3mg/dl以下となるケースでは、自覚症状は全くなく、ビリルビンが少し高目で推移する方が多いです。Gilbert症候群と呼ばれ約5%前後の方が該当するん尾ではないかと考えられています。体質性黄疸であればそれほど問題はありませんが、体質性ではない黄疸の場合は重篤な疾患のケースが多く、きちんと見極めることが必要ですので、重篤な病気ではないことを確認する必要がありますので、専門医にご相談ください。
自己免疫性肝炎
前述のとおり、肝臓は免疫機能でも重要な役割を担っていますが、免疫異常により、自身の肝細胞を攻撃することで発症すると考えられている肝炎です。中年以降の女性に多く見られ、免疫の働きを抑制するステロイドによる治療が有効な場合が多いです。全国で2万人程度(あくまで推計値です)の非常にまれな肝炎と考えられていますが、強く疑われる場合には、高次医療機関に連携しより精密な検査が必要です。
原発性胆汁性胆管炎
肝臓は、胆汁を合成する機能もありますが、その肝臓の中で胆汁の通りが悪くなり滞留し、肝細胞の破壊と線維化が徐々に進行する病気です。中年以降の女性に多く見られます。原因はよくわかりませんが、免疫異常が関与しているのではないかと考えられています。全国で5万人程度(あくまで推計値です)の非常にまれな肝炎と考えられていますが、強く疑われる場合には、高次医療機関に連携しより精密な検査が必要です。
<肝機能障害の外来>
日本消化器病学会専門医である院長、副院長が実施しております。肝臓の病気ですぐに自覚症状のおられる方はあまりいません。多くは自覚症状がなく、検査の異常値のみのことがほとんどで、GOT、GPT、γGTPなどの異常値、ウイルス性肝炎を指摘された方、ご両親や兄弟にウイルス性肝炎の感染者がいる方などは専門医への受診をお勧めします。まずは一度お気軽にご来院ください。
肝臓病セルフチェックシート
- 健康診断などで肝機能異常を指摘されたことがある
精密検査の受診をおすすめします。 - 定期的に健康診断や病院で検査を受けていない
自覚症状が少ない臓器・病気なので血液検査の受診をおすすめします。 - 家族に肝炎や肝臓の病気の人がいる
- B型肝炎、C型肝炎の検査を受けたことがない
C型肝炎は血液検査で分かります。検査したかどうか分からない人は受診してください。 - 臓器移植、輸血を受けたことがある
- 鍼治療を受けたことがある
鍼治療でウイルス性肝炎に感染することがあります。 - ボディピアス、入れ墨をいれている
- 透析を受けている
長い間透析を受けている人はウイルス性肝炎のリスクです。 - 肥満気味である
肥満が原因で脂肪肝や肝硬変になることがあります。 - 大酒家である
お酒をたくさん飲む人はお酒が原因の肝臓病になることがあります。 - 白目が黄色い気がする 白目が黄色い場合、黄疸の症状の可能性があります。
- 体がかゆい 黄疸は、皮膚、白目の変色のほかに、かゆみもでます。
- 血がとまりにくい 血がとまりにくいのは肝機能低下の症状の一つです。
- 足がむくむ 足がむくむのは肝硬変の症状の一つです。
- お腹が張る 腹水がたまるのは肝硬変の症状の一つです。
- 右のあばら骨のあたりの痛みがある 肝炎や進行した肝がんのため、右のあばら骨のあたりに痛みを感じることがあります。
上記に当てはまる人は、肝臓病のリスクがあります。
もっとも、ウイルス性の肝臓病の場合や、定期的に受診されている検診などの検査項目に該当する項目があれば、直近の検査結果を確認されるのがよいかと思われます。
一方、症状については肝臓病以外の病気でも見られる症状もあることから、早期発見、早期治療のため、気になる方は、受診を検討してください。お手元に直近の血液検査の結果をお持ちの方は、ご持参いただけると診察の一助になります。
肝臓病は初期には症状がないことが多く、肝臓病のリスクがないかどうかチェックし、また健診などを活用するようにしてください。