C型肝炎
C型肝炎の治療は、インターフェロンフリー療法が主流になり、マヴィレットなど強力な治療薬も登場、ここ数年で治癒の可能性が格段に上昇、医療費助成も受けられ自己負担も少なく治療が可能になりました。当院でも治療実績があります。費用面で御心配な方はお気軽にご相談ください。
C型肝炎・C型肝炎ウイルスとは
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)によって発症する病気です。
HCVに感染した人のうち、およそ70%前後の人が『持続感染者』となります。
肝臓は、自覚症状がないまま病気が進むことが多く、『沈黙の臓器』と呼ばれています。年齢や人によって進行するスピードが大分異なりますが、慢性肝炎の発症から肝硬変には20年前後、肝硬変から肝がんは10年前後で進行するケースこともあります。
何らかの方法でHCVの感染が判明すれば、治療可能なケースがありますので、ご心配な方は検査をすることをお勧めします。
日本では、およそ100~150万人前後のHCV感染者がいると考えられますが、本人に自覚がない方、感染していることを知らない方、自覚があっても通院されていない方が多くいらっしゃいます。
慢性肝炎や肝硬変、肝がん患者の60%前後がHCV感染者(文献によってはもう少し多い調査もあります)で、年間およそ3万人前後の方が肝臓がんで亡くなってます。
C型肝炎の感染経路は?
血液です。日常生活の中で、他人の血液に直接触れることがなければ、感染の危険性はほとんどありません。
現在では問題ないと考えられる血液製剤ですが、数十年前に血液製剤を使用されたケースや不衛生な注射器を使用した医療行為などでの感染が考えられ、現在でも犯罪行為などに伴う注射器の使いまわし、入れ墨を入れる、消毒が不十分な器具でピアスの穴をあける行為での感染などが考えられます。他には、感染率は低いと考えられているものの、母子感染や性行為などが考えられます。
特に下記の該当される方は、検査される感染の有無を確認されることをお勧めします。
- 1992年以前に大きな手術や輸血を受けた方
- 1994年以前にフィブリノゲン製剤を使用された方
- 1988年以前に血液凝固因子製剤を使用された方
C型肝炎の症状
前述の通り、肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、C型肝炎や慢性肝炎では、自覚症状はありません。あったとしても、何となく体がだるい、疲れやすい、食欲ないなど、ほかの病気とおなじ症状が多いです。したがって、自覚症状がないまま肝硬変に進行、肝臓がんになっても症状ない患者さんも多いのが実情で、血液検査を受けて初めて感染が判明したり、肝硬変になってから、判明することが多いです。健康診断などの機会に、肝炎ウイルス検査をすることをお勧めします。
肝硬変になると、手のひらが赤くなる手掌紅斑という症状が出たり、黄疸という症状がでます。他には、むくみ、腹水がたまる、鼻血など出血しやすくなる、出血が止まりにくくなる、などの症状がみられます。
肝臓がんになっても初期は症状がほとんどないものの、肝硬変を合併していることが多いため、肝硬変の症状がみられることが多いです。進行した肝臓がんでは、腹痛、発熱などの症状がみられます。
C型肝炎の経過
血液を介してHCVに感染しても、多くの方は自覚症状がありません。稀に2~14週間の潜伏期間経過後に急性肝炎を発症することがあるものの、大多数の方は「不顕性感染」です。
ただし、およそ60~80%前後の人は、自然治癒(ウイルスが排除)せず『慢性肝炎』になると考えられます。
前述の通り、慢性肝炎になった方のうち30~40%の方が約20年で「肝硬変」、肝硬変になった方では、年率約7~10%前後の確率で肝臓がんを発症すると考えられています。
C型肝炎の検査 HCV抗体検査
HCV抗体検査を行います。C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかがわかります。血液を採血するだけです。検診などでも実施していますので、検査をお勧めします。
HCV抗体検査が陽性だった場合
C型肝炎ウイルスに感染したことがある、ということがわかります。ただし、現在も持続感染をしているか、治癒しているかはわかりません。そこで、精密検査を行います。
HCV核酸増幅検査
HCV-RNA定量検査ともいい、血液中にC型肝炎ウイルス遺伝子があるかどうかを調べます。陽性だった場合、現在もC型肝炎ウイルスに感染していることになります。
次に、ウイルスの型を調べるため、セログループあるいはゲノタイプを測定、治療方法の選択や治療効果の予測をします。
現在の肝臓の状態を調べるには?
AST(GOT)値、ALT(GPT)値を検査します。検診などでよく検査される指標です。
値が高いと肝臓の炎症が強いことになりますが、低くても看過できません。
慢性肝炎から肝硬変へどの程度進行しているか、肝炎の進行度を調べることも重要で、血清アルブミン値、プロトロンビン活性値、血小板数等を測定、腹部超音波検査、CT、MRI検査などの画像検査を行い、判定します。腹腔鏡カメラや肝臓の組織・細胞の一部を採取し顕微鏡で観察する「肝生検」を行うこともあります。
肝がんの早期発見はとても重要です。「腫瘍マーカー」を血液検査で測定しますが、腫瘍マーカーだけで早期発見ができるわけではないため、画像診断などを併用し判定することが重要です。
C型肝炎の治療 ~ 当院での治療
C型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会)あります。根本的な治療は、HCVの体内からの排除です。以前はインターフェロンを使用していました。現在は、おそらくほとんどの方が飲み薬で治療します。2019年2月には、重度の肝硬変の方でも使用可能な薬が登場しています。
抗ウイルス薬は非常に高価ですが、肝臓がんまで進行していない場合には、医療費助成を受けることが可能なため、自己負担は少額で済みます。進行する前に早期発見し早期治療することをお勧めします。
①インターフェロン(かつての治療法)
1992年以降、日本ではインターフェロン(注射)を基本にした治療が行われていましたが、効果が不十分で副作用も多いものでした。その後、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)とペグインターフェロン、リバビリンを併用する3剤療法が行われるようになりました。
②インターフェロンフリー(現在の治療法)
2014年9月より、インターフェロン(注射)を使わない、飲み薬だけの治療「インターフェロンフリー」治療が始まりました。現在では、C型肝炎の抗ウイルス治療の主流となりました。ここ数年のことです。
現在、ウイルスの型、肝炎の進行度、過去の治療歴を考慮し、下記の治療が選択されます
- ソホスブビル(ソバルディ)とリバビリンの併用療法(12週or24週)
- ソホスブビル・レジパスビル配合錠(ハーボニー)(12週)
- エルバスビル(エレルサ)とグラゾプレビル(グラジナ)併用療法(12週)
- グレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠(マヴィレット)(8週or12週)
- ソホスブビル・ベルパタスビル配合錠(エプクルーサ)
(非代償肝硬変に対して12週or再治療に対してリバビリンと併用で24週)
これらの治療法により、慢性肝炎から代償性肝硬変までの初回治療の場合、95%以上の方のウイルス排除が見込まれています。また、インターフェロンのような副作用が少ないため、インターフェロンが使えなかった方でも短期間で安全に治療ができるようになっています。薬には特徴があり、薬を使えない方、併用できない薬があり、どの治療法を選ぶかは、慎重に専門医と相談することが重要です。治療を受けて、ウイルス排除できなかった方は、薬剤耐性ウイルス保有の可能性があり、専門医と相談し次の治療(再治療)を決める必要があります。
なお、C型肝炎ウイルスの体内からの排除が容易になったものの、悪化した肝臓は元には戻りませんので、経過観察を続けるのが重要で、定期的な超音波検査やCT・MRI検査などの画像検査を受けることが重要です。