よくある質問 Q&A
Q 内視鏡検査前に絶食しますが、何時間絶食するのでしょうか?医療機関によって違うようですがなぜでしょうか?
A. 前日のよる9時から絶食。
ただし緊急性がある場合はこれより短くても施行します
経験上、絶食時間が長ければ長いほど検査結果はうまくいきます(と思います)。この検査結果とは病気か否かではなく、検査時の画像診断がいい状態で行えるということです。固形物がなくなるだけでなく、なくなった後しばらく時間をおいて自浄作用を待つ必要があり、この時間が必要であると考えられます。
したがって、当院では、前日よる9時以降の絶食(12時間)を原則とさせていただいており、まえもって来院することが明白な場合は、前日よる9時以降の絶食をお願いしています(理由は後述)。症状がある場合や特に吐血があるなどの緊急を要すると認められる場合は、この限りではありません。
医療機関によって違うのは、検査時の患者様の状態に応じて絶食時間が異なるとともに、来れる患者様の状況の想定が医療機関によって異なるため、医療機関によって異なって見えるのだと思われます。
下表は、絶食時間の例です
出典 | 時間 | 摘要 |
---|---|---|
①手術前の絶飲時間 | 2時間 | (明示・麻酔科学会『術前絶飲食ガイドライン』) |
②手術前の絶食時間 | 6~8時間 | (明確な絶食時間を示さない・同上) |
③米国の消化器病学会 | 6~8時間 | 最後の軽食はトーストと水を前提(ガイドライン) |
④日本の消化器内視鏡学会 | 前日よる9時 | 『上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療』2018年3月改訂版 |
⑤内視鏡メーカーO社のHP | 前日よる9時 | |
⑥緊急を要する場合 | - | 検査というより治療をすることのほうが優先する場合。止血を要する場合など。 |
⑦日本消化器がん検診学会 | 前日よる9時 | 対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル |
ガイドラインには適応とならない例が列挙されており、上表どおりの時間で施行しないケースも十分ありえますす。
- 麻酔下・鎮静下で手術を行う際の絶食時間 6~8時間(固形物)明確な絶食時間を示さない
- 麻酔下・鎮静下手術を行う際の絶飲時間 2時間(水)明示
- 全米消化器病学会のガイドラインでは、6時間
- 日本の消化器内視鏡学会の『上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療』2018年3月改訂版では、前日よる9時
- 内視鏡メーカーのHPでは、前日よる9時以降の絶食(12時間)
- 緊急を要すると認められる場合
- 最後に、当院では自治体より検診事業を受託しております。
日本麻酔科学会『術前絶飲食ガイドライン』に記載されています。世界的な絶食時間短縮の流れを受けて、短縮することを目的にガイドラインの策定を行ったようです。水については明示されていますが、固形物については、海外文献・学会の時間を引用する形での記載にとどまっており、『明確な絶食時間を示さない』と記載したうえで6~8時間としており、制定には至っておりません(ややこしい記述で申し訳ありません)。なお、消化器疾患や妊娠されている方などは適応外とされており、患者様の状況に応じた対応が求められています。
ガイドラインで明示するには、エビデンスが必要になるのですが、肝心なエビデンスをそろえるのが難しいようで、制定には至っていません。この点、水の場合は、はっきりと明示しています(エビデンスのレベルもAです)。固形物の場合は、時間をで明示するには、食品や量を限定するなどの制約条件が必要になるものと思われます。
アメリカを始め欧州などの学会のガイドラインでは、無条件でというわけでなく、最後の食事を軽食として、トーストと水であることを前提に6~8時間としています。体格の大きい欧米人にとって12時間という完全な絶食は難しいためかもしれません。なお、飲食物により消化時間が異なるため留意が必要とも記されており、最後の食事の内容に大きく左右されるようです。コメなどを主食としているアジア系(日本人)の場合は、消化にかかる時間がより長いことはわかっていると示唆はしていますがますが、海外の学会ではトースト以外の食品の絶食時間に関しては明示できる知見は持ち合わせていないようです。
また、同学会に提起された論文の中には、絶食時間を6時間と10時間に分けた検証を行ったものがあり、6時間で半数、10時間でも10%前後の方の画像診断で不鮮明(不都合な箇所がある)との結果が報告されています。(引用の承諾を申請中です)
絶食時間の短縮については議論があったようですが、変更はされていません。
一方、病気がある、むねが痛い、胃が痛い、きもちが悪いなど、患者様からの主訴がある場合は、緊急性のほうが優先しますので、これに限らず実施するのが一般的で、特に血便 や吐血がある場合は、出血している可能性があり、出血部位を確定し止血する必要が出てきますので、微細な観測よりも優先し、至急施行することになると思います。
日本消化器がん検診学会の「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル」に沿って実施する旨指示されておりまして、このマニュアルに標記の通り記載されております。状況のわからない不特定多数の一般の方がご覧になるHP上では、この通りの記載とさせて頂いております。(これより短い時間で検査するとはかけません。)
この様に、絶食時間一つとってみても、画像診断の精度に大きく影響が出ます。絶食時間が短いほうが一見、患者様にやさしいように思われます。しかし、やるだけでいいのならそれでもかまいませんが、せっかく検査をする以上、見落としのない検査、精度の高い丁寧な検査をと考えておりますので、前日よる9時以降の絶食にご理解とご協力をお願いします。
胃がんは進行が早く、微細な病変であっても見逃してしまうと次回の検査までの時間が長いと命取りになる可能性があるため、留意して検査しております。
検診と保険対象の内視鏡検査の大きな違い
- 保険対象
あらかじめ病気であるとの何らかの確証・心証があり実施するため、治療実施の動機、必然性が強く、最適とは思われない絶食時間であっても治療を視野に入れた実施が優先 - 検診
健康体であることも前提とするため、検査に伴うリスクは極力排除すること、より確度の高い検査水準を確保することを優先
日本では、主要な学会がこのような見解を示されており、症状が何もない状態において、この水準を満たさない検査施行はある意味チャレンジといえるかもしれません。